腹腔鏡下手術は、腹腔鏡という器具を使って行う手術のことです。体にかかる負担が少ないので、最近では産婦人科だけでなく外科や泌尿器科などで、一般的に行われています。どんな手術なのか説明しましょう。
腹腔鏡下手術とは
腹腔鏡は体外から体内の様子を観察する器具であり、体内へ挿入する部分が曲がる軟性内視鏡と曲がらない硬性内視鏡があります。腹腔鏡をハイビジョンあるいは4K対応カメラや3Dカメラと接続することによって腹腔内を高画質映像や3D映像で観察することが可能となります。
産婦人科領域では、臍と下腹部皮膚に5〜10mm程度の穴を1〜5か所あけ(図1)、手術に必要な空間を確保するためにCO2ガス(二酸化炭素)を腹腔内に注入します(気腹法)。腹腔鏡手術用鉗子、持針器、超音波凝固切開装置や血管シーリング装置などの専用器具を用いることによって(図2)開腹手術と同様の手術を行うことが可能です。
腹腔鏡下手術の有益性と短所
腹腔鏡下手術の有益性については、小さな傷で手術を行うため傷が目立ちにくい、術後の疼痛が減少するため術後早期のQOLが向上する、入院期間の短縮、視野の拡大が可能となる、深い場所に到達できる、出血量の減少、などが挙げられます。
短所については、手術時間が延長する、小さな傷から器具を介して手術を行うため開腹手術とは異なる技術に習熟する必要がある、などがあります。
産婦人科領域の対象疾患(保険適用)
良性疾患では卵巣のう腫などの子宮付属器腫瘍、異所性妊娠、子宮内膜症、子宮良性腫瘍(子宮筋腫や子宮腺筋症など)などの他に、子宮脱(平成28年4月に腹腔鏡下仙骨腟固定術が保険適用)があります。悪性疾患では平成26年4月に進行期ステージIAの早期子宮体癌に対する腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が保険適用となり、平成30年4月には腹腔鏡下子宮悪性腫瘍手術が子宮頸がんにも適用拡大されています。
参考
産婦人科内視鏡手術ガイドライン2013年版:日本産科婦人科内視鏡学会編
徳島県立中央病院産婦人科 前川 正彦
徳島県立中央病院産婦人科 前川 正彦