徳島大学での出生前検査について

出生前検査とは

出生前検査とは生まれてくる前、お母さんのお腹の中にいる胎児の病気を調べる検査です。赤ちゃんの3~5%は生まれつきの病気を持って生まれてきます。さまざまな病気の中には生まれてすぐに治療してあげなければ救命できないようなものもあります。そのような病気も赤ちゃんがお腹の中にいるうちに見つかっていれば、生まれた後の治療・サポート体制を十分に整えたうえで、お産することができます。病気によっては生まれる前から治療ができることもあります。また何よりご両親・ご家族が心の準備をしておくことができます。
出生前検査は主に超音波検査が行われます。胎児の染色体を調べる羊水検査や母体血胎児染色体検査(NIPT)も出生前検査に含まれます。徳島大学病院では超音波検査も妊婦健診で行う通常の超音波検査とは別に、より精密に検査する胎児超音波精密スクリーニングと胎児心臓超音波検査を行っています。
胎児超音波精密スクリーニングは、時間をかけて胎児に病気がないか、全身を見る検査です。一方、胎児心臓超音波検査は、心臓の病気が疑われる方に行う心臓に特化した精密検査になります。

胎児超音波精密スクリーニング

徳島大学病院では、毎週金曜日に胎児超音波精密スクリーニングを行っています。通常の超音波検査は5分程度ですが、これは1人につき約30分程度をかけ、胎児を超音波で詳しく調べるものです。この検査により多くの心臓病や肺の病気などが生まれる前に見つかります。
妊娠24~28週頃に行っていますが、この頃が最も見やすい時期であるためです。この検査で病気がわかった場合、必要であれば当院で妊娠・分娩管理をします。生まれた後は小児科の医師が適切な治療を、速やかに開始します。一方で病気の可能性が低いことが分かれば、安心してかかりつけの産婦人科にて分娩することができます。予約はかかりつけの産婦人科からFAX予約を取っていただいています。

胎児心臓超音波検査

心臓の病気は生まれつきの病気の中で最も多いもののひとつです。実は心臓の病気の多くは軽症ですが、中には生まれた後、急激に状態がわるくなり、亡くなってしまう場合もあります。このような場合の治療には、手術が必要なことが多いのですが、状態が悪くなってからの緊急手術では救命率も下がってしまいます。一方で胎児心臓の超音波は難度が高く、心臓の精密検査は胎児心臓超音波検査として限られた施設でのみ行われています。徳島大学病院は四国で唯一の代表的胎児心臓超音波検査施設として登録されています(H30年4月現在 日本胎児心臓病学会)。生まれた後の赤ちゃんの心臓をみる小児循環器科の医師と連携し、行っています。

羊水検査・母体血胎児染色体検査(NIPT)

羊水検査と母体血胎児染色体検査(NIPT)は、ともに胎児の染色体を調べる検査です。羊水検査は、病気を確定診断する検査、一方、NIPTは病気の確率をみる検査であり大きな違いがあります。羊水検査は妊娠16~18週に超音波で見ながら、お腹から子宮内に針を刺して羊水を取ります。羊水検査では染色体の全体像をみて確定診断に至ります。羊水検査では0.4%程度で流産が起こるとされています。一方でNIPTは妊娠10~14週に母体の採血を行い、血液中のDNA断片濃度をみることで21トリソミー(ダウン症候群)、18トリソミー、13トリソミーの3つの病気の確率が高いか低いかを判定する検査になります。NIPTは、採血ですむため流産などの危険性はありませんが、検査の限界や結果の解釈に注意が必要で、検査前後の遺伝カウンセリングが欠かせません。
羊水検査・NIPTともに高齢妊娠(35歳以上)などの条件を満たす方で行っています。いずれの検査も受けられる前に、ご夫婦で十分に相談することが重要です。なお徳島大学病院では年間、NIPTが約120件、羊水検査が約60件行われています。NIPTの詳細は徳島大学病院 臨床遺伝診療部のHPを参照ください。

出生前検査の進歩は著しく、生まれてくる赤ちゃんの救命のためには不可欠な検査となってきています。しかしながら出生前検査には倫理的な側面もあり、特に羊水検査やNIPTは事前にご夫婦で慎重にご検討することをお勧めします。

徳島大学病院産科婦人科 加地 剛

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